おにぎり

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母の作るおにぎりは完全な正三角形だった。全ての面がしっかりあって何個作っても完璧に同じ大きさ。お弁当に入れられると固くて嫌だった。それに比べて祖母の作るおにぎりは、ほぼ丸なんじゃないかと思うほどぼんやりした形をしていた。手で持つとボロボロ崩れてしまうような脆さで、母のそれとは全くの逆だった。

祖母の家で食べさせてもらうやわらかいおにぎりが大好きだった。それは祖母がたくさん用意してくれたアイスや私の好物だったコロッケを張り切って作ってくれていたことの喜びも合わさっているのだろうが、すぐ崩れちゃうよ〜と笑いながら食べる祖母のおにぎりはおいしくて、そのたび母の作るおにぎりのことを少し嫌いになった。
祖母は今、介護施設にいる。私のことも忘れて、もちろん、おにぎりを作ることもない。私は今日も、おにぎりを作る。祖母のやわらかいおにぎりが食べたいなぁと思いながら、私が作るのはいつも、母と同じ、かたいおにぎりだった。